M4A3(76)W シャーマン
「M4A3(76)W シャーマン (プラモデル) (アスカモデル 1/35 プラスチックモデルキット No.旧35-019 )」です
●第2次世界大戦後期におけるアメリカ軍の中戦車「M4A3 76mm砲搭載型」を1/35スケールで再現したプラスチックモデル組立キット
●対戦車能力の高さから1944年秋以降のアメリカ戦車部隊の主軸となった「M4A3 76mm砲搭載型」を再現、「M4A3」の「後期型車体」に「76mm砲砲塔」を装備した端整なフォルムを表現した内容となっています【 「M4A3 シャーマン 76mm砲搭載型」について 】
●第2次世界大戦が勃発し、 それまでの戦車後進国であるアメリカは、その工業生産力を背景に急速に戦車戦力の拡充が図られました
●1942年から量産に入った「M4中戦車」シリーズは、そのアメリカ工業力のシンボル的存在で、エンジンの供給の関係から「M4」~「M4A4」の5種の各型に区別して大量に生産が行なわれ、アメリカ軍内だけではなく、イギリス連邦軍やソ連軍にも供与され、連合軍の反攻の象徴ともなりました
●「M4中戦車」シリーズは、「37.5口径 75mm戦車砲 M3」を装備、前面の最大装甲厚は76mmという防御力を持っていました
●この能力は、登場時にはドイツ軍の「4号戦車」よりも防御力で勝り(「M4中戦車」の方が避弾経始に優れる)、攻撃力では「4号戦車」の長砲身型よりは劣りましたが、榴弾による対人目標への効果は高く、汎用戦車として高く評価されました
●ドイツ軍は1942年末に重戦車「ティーガー 1」、1943年初めに新型中戦車「パンター」、そして「4号戦車」の改良型と次々と新型の戦車を開発します
●「M4中戦車」は、チュニジア戦、シシリー戦で「ティーガー 1」、イタリア戦において「ティーガー 1」「パンター」と対峙しており、1対1での戦いでは勝負にならないことが判明、しかし「ティーガー 1」「パンター」は少数で運用されたことからそれ程問題視はされませんでした
●ところが、1944年6月にノルマンディ戦が開始されると、ドイツ軍の戦車師団はその戦車の半数を「パンター」が占めるようになっており、「M4中戦車」は苦戦を強いられてしまいます
●一方、生産数が或る程度揃うようになった「M4中戦車」シリーズは、全面的な改良が実施されるようになりました
●この改良は、防御力の強化と生産性の向上を図ったもので、「M4A4」は生産を停止、その他の各型は新型車体となる「後期型車体」に生産が移行していきます
●「M4A3」の「後期型車体」では、分割されていた前面装甲板を1枚の単一装甲板へと変更、その装甲厚も若干強化されました
●被弾時による誘爆の危険性が指摘されていた弾薬庫は、周囲を水で覆った湿式弾薬庫(「W」と表記される)へと変わり、これにより実質的な防御力は大きく向上しています
●また、火力強化型として「76mm戦車砲 M1」を搭載した試作戦車「T23」の砲塔を「M4A1」に搭載したタイプも登場、この車両は1944年の初めから生産が開始されました
●この「M4A1 76mm砲搭載型」は、補充用としてイギリス本土へと送られたものの、アメリカ軍の首脳部は「37.5口径 75mm戦車砲M3」よりも榴弾の炸薬量が小さい「76mm戦車砲 M1」について懐疑的であり、実戦部隊への配備が控えられてしまいます
●ノルマンディ戦において「ティーガー 1」「パンター」に苦戦を強いられていたアメリカ戦車部隊は、空軍の支援などにより何とか持ちこたえていたものの、その性能差とこれまでの出血により、従来の「M4中戦車」シリーズでは戦えないと判断し、イギリス本土に備蓄されていた「M4A1 76mm砲搭載型」を急遽導入、1944年8月の「コブラ作戦」に使用しました
●「M4A1 76mm砲搭載型」は、従来の「M4中戦車」シリーズよりも優れた装甲貫通能力を持つ「76mm戦車砲 M1」により対戦車戦闘で活躍、アメリカ戦車部隊から絶大な評価を獲得します
●ただ、アメリカ軍の首脳部と戦車部隊の現場では、車体の性能としては「M4A1」よりも「M4A3」の方が評判が良く、戦車部隊の装備車両として徐々に「M4A3」が占める割合が増えていました
●そこで、「M4A3」の車体に「M4A1 76mm砲搭載型」と同じ砲塔を搭載した「M4A3 76mm砲搭載型」が登場、1944年の秋頃から戦車部隊へと配備されています
●「M4A3 76mm砲搭載型」が配備される頃には、「76mm戦車砲 M1」用として高速徹甲弾「HVAP」が支給され始め、従来の徹甲弾よりも高い装甲貫通能力を持つことにより、この「M4A3 76mm砲搭載型」は戦車部隊の中核を占めるようになりました
・ 高速徹甲弾「HVAP」は、1000m程度の距離で「パンター」の正面装甲を貫く能力を持っていましたが、当初は各車両あたり2、3発程度しか支給されず、主に「とどめを差す」場合に使用されたようです
●1945年初頭ごろからは、後継車両として足周りを水平懸架式サスペンション(HVSSサスペンション)とした「M4A3E8」が登場、「M4A3 76mm砲搭載型」と「M4A3E8」とは大戦末期のアメリカ軍戦車部隊を代表する存在となったのです
【 「M4A3(76)W シャーマン」のキット内容について 】
●このアメリカ軍の中戦車「M4A3 76mm砲搭載型」を再現したプラスチックモデル組立キットです
●アスカモデル社のリサーチ力と洞察力、そして高い成型技術により「M4A3 76mm砲搭載型」を再現、過度に細部重視に偏ることも無く、ディテールのポイントを押さえながらも、作り易さも考慮された非常にバランスの取れた高品質な内容となっています
●キットは、同社の高い成型技術により、細部のディテールが再現されており、車体の溶接跡、シリアルナンバー、砲塔の鋳造肌なども繊細なモールドにより表現されています
●また、最近のニューキットと比べてパーツ数は抑えられ、同社らしくカッチリとした造りで組み易い内容となっています
●「M4中戦車」シリーズのディテールアップポイントでもあるライトガードは、プラパーツとエッチングパーツが用意され、好みにより選択して使用できます
・ ペリスコープガードを再現するエッチングパーツが付属しています
●「M4A3 76mm砲搭載型」は、「砲塔」「車体上部」「車体下部」の3ブロックで構成されています
【 砲 塔 】
●砲塔は、「M4A3 76mm砲搭載型」の初期型となる円形の大型の装填手ハッチを持つタイプを再現、表面にはアメリカ戦車らしい平滑な鋳造肌が表現されています
●「76mm戦車砲」の砲身は左右分割式となっています
・ 砲身は砲口部分は何も装着していない「初期型」と、砲口リングが付いた「中期型」との2種が付属、選択して使用します
・ 防盾は、本体と左右の吊り下げリングの3パーツにて再現
・ 防盾(砲身)は、基部に内蔵されるポリキャップにより、上下に可動します
●「M4A3 76mm砲搭載型」の砲塔部は、実車の鋳造構造の分割ラインに合わせた上下分割式となっています
・ 装填手ハッチは別パーツで開閉状態が選択可能
・ 砲塔側面の排莢ハッチは別パーツで、開閉状態が選択できます
・ ベンチレーターカバーは別パーツで、後方の「M2 重機関銃」の固定具も正確に再現されています
・ 車長用の直接照準器もパーツ化
●車長キューポラは、通常の成型色のパーツとクリアーパーツとが用意され、選択して使用できます
・ クリアーパーツを利用することにより、ビジョンブロックのガラス部の表現がよりリアルとなるでしょう
・ 車長ハッチは開閉状態が選択できます
●「M2 重機関銃」は、インジェクションキットとしては、非常に高いレベルで再現されています
・ 銃身は、銃身交換用の把手が付いた場合と、付いていない場合とが選択できます
・ 銃口は開口処理されています
・ 特徴的な放熱筒は、スライド式金型により放熱口の位置が正確に表現され、貫通した状態で成型されています
・ 機関部の蓋は別パーツで、開閉状態が選択できます
・ コッキングハンドルは別パーツ
・ 弾帯が付属
・ 「M2 重機関銃」は砲塔後部の固定具に装着することもできます
【 車体上部 】
●車体上部は、角型の車体に大きなエンジングリルを持つ「M4A3 76mm砲搭載型」の車体レイアウトを再現、後部には排気用のディフレクターが用意されています
●「M4A3 76mm砲搭載型」の車体上部はエンジンデッキ部分を除き、一体成型のパーツで再現されています
・ 車体前部のベンチレーターは別パーツ化されています
・ 操縦手ハッチ、前方機銃手ハッチは別パーツで構成され、開閉状態を選択して組立てることができます
・ 各ハッチに装備されたペリスコープは成型色パーツとクリアーパーツとを選択できます
・ ペリスコープガードを再現したエッチングパーツが付属
・ 給油口、後部ベンチレーター、エンジングリルハッチ止めなどがパーツ化
・ 後方のディフレクターは6分割式により再現、開閉状態が選択可能です
・ 後方の荷物ラックは開閉状態が選択できます
・ 各車載装備品は固定具が一体成型されています
●車体前後のライトガード及びホーンガードは、プラパーツとエッチングパーツとが選択できます
・ 前照灯のガラス部を再現するクリアーパーツが付属
・ ホーンは2分割式で、ラッパ状の形状が再現されています
●「M4A3 76mm砲搭載型」のエンジンデッキ部分は前後分割式で、エンジングリル部は別パーツです
●前部フェンダー及びサイドスカートの取り付け台座部分は車体とは別パーツとなっています
・ サイドスカートの取り付け台座は実車の分割に合わせて左右各3パーツ、後部1パーツで構成され、後部はエッチングパーツとなります
【 車体下部 】
●「M4A3 76mm砲搭載型」の車体下部は各パネルを貼り合せる箱組み方式となっています
・ 各パネルには貼り合わせ用のガイドがモールドされ、歪みなく組立ができるように配慮されています
・ 車体下部前面のデファレンシャルカバーはワンピース型、肉厚の増したシャープノーズタイプが再現されています
●「垂直懸架サスペンション(VVSSサスペンション)」の各ユニットは、ボギー部、アーム部、スプリング部の3ブロックで構成され、転輪及びリターンローラーを挟み込んで完成させます
・ ボギー部には、付属している発泡ゴム製のシートをカットして内蔵、これによりアーム部が一定の固さを持って上下可動するようになっています
・ 転輪は、プレス型転輪とディッシュ型転輪(重量型の表面部が平坦なタイプ)とが付属、選択して使用します
・ 起動輪は、「後期型」と「クライスラー型」とが付属、選択して使用します
・ 下部転輪、起動輪、誘導輪は可動式です
【 履 帯 】
●履帯は、接着及び塗装が可能な素材によるベルト式履帯が付属しています
・ 履帯は、表面部に楔形状の滑り止めが付いた中央がラバー製のダブルピン式履帯「T48(ラバーシェブロンタイプ)」が表現されています
・ 履帯パーツの接着には瞬間接着剤、塗装に関してはラッカー系塗料を使用することが指定されています
【 アクセサリーパーツ 】
●アクセサリーパーツが付属しています
・ ジェリカン ×2
・ 水用ジェリカン ×2
・ 重機関銃用弾薬箱 ×2
●前照灯のガラス部やペリスコープ、車長キューポラなどを再現するクリアーパーツが付属しています
●ライトガード、ペリスコープガードを再現するエッチングパーツが付属
【 塗装とマーキング 】
●「M4A3 76mm砲搭載型」のマーキングとして、アメリカ軍仕様となる4種類の塗装例が説明書に記載されています
・ 第6機甲師団 第69戦車大隊 (フランス / 1944年~1945年)
・ 第761戦車大隊 (フランス・ナンシー / 1944年11月)
・ 第3機甲師団 第774戦車大隊 (ベルギー・ボヴィニー / 1945年2月)
●説明書の塗装例に基づく国籍マーク、部隊番号、車台番号などを再現したデカールが付属
●2010年 一部新金型
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【 「M4A3(76)W シャーマン」のワンポイント 】
●「M4A3 76mm砲搭載型」搭載型は、防盾に装備された同軸機銃が意外に目立ちますので、キットに余剰パーツとして付属している前方機銃のパーツを利用して防盾左側(装填手側)の開口部に装着するとよりリアルな表現となるでしょう
●その際、銃口の位置は防盾表面よりも少しだけ奥に下がった状態となります