ドイツ 重対戦車自走砲 ナースホルン
「ドイツ 重対戦車自走砲 ナースホルン (プラモデル) (タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.335 )」です
●第2次世界大戦時におけるドイツ軍の「重対戦車自走砲 ナースホルン」を1/35スケールで再現したプラスチックモデル組立キット
●世界最強クラスの牙を持つ対戦車自走砲として各戦線で勇戦を繰り広げた「重対戦車自走砲 ナースホルン」を再現、長大な主砲、砲尾、砲架等による複雑な構造を持つ戦闘室、そして平面を基調とした車体形状など、重火力を誇ったドイツ軍のオープントップ式車両ならではの魅力的なフォルムとメカニカルな構造とを再現した内容となっています
【 「重対戦車自走砲 ナースホルン」について 】
●大戦初期におけるドイツ軍戦車は連合軍戦車と比べて火力、防御力に劣っており、連合軍の重装甲戦車に対抗する際にその救世主となったのが「88mm高射砲」でした
●この「88mm高射砲」は高初速で撃ち出される砲弾が、当時としては破格の装甲貫通能力を持っていたため、「88mm高射砲」を擁する高射砲部隊は戦地各地における火消し部隊としてドイツ軍将兵から絶大な信頼を得ることになりました
●しかし、「88mm高射砲」はその名の通り、本来は航空機用の火砲であり、仰角を確保するために砲身が高い位置にあることから砲自体のシルエットが高く、対戦車砲として活用するには大きな欠点となりました
●このため、「88mm高射砲」の対戦車砲版が作られることとなり、さらにより装甲貫通能力が高い長砲身型の「88mm高射砲 Flak41」が登場したことから、対戦車砲版のベースとしてこの「88mm高射砲 Flak41」が選ばれます
●この対戦車砲は、紆余曲折を経て「ラインメタル」社の「88mm対戦車砲 PaK43」と、「ラインメタル」社と「クルップ」社との協同による「88mm対戦車砲 PaK43/41」という2種が平行して開発が行われました
●一方、ドイツ軍は大戦中期になると「マーダー 2」「マーダー 3」などの強力な主砲を搭載した対戦車自走砲を戦場へと投入して戦果を挙げましたが、このような弱装甲の対戦車自走砲は損害を受けることも多いのも事実でした
●そこで、ドイツ軍は敵戦車をアウトレンジで撃破できる極めて強力な装甲貫通能力を持つ「88mm対戦車砲 PaK43」及び「88mm対戦車砲 PaK43/41」に注目、これの自走砲化が進められました
・ 開発の結果、搭載砲は「88mm対戦車砲 PaK43/41」をベースとすることになります
●この自走砲の車体としては、開発中だった「3号戦車」と「4号戦車」とを融合した自走砲専用の車台「3/4号戦車車台」が選ばれ、重榴弾砲の自走化が進められた自走榴弾砲「フンメル」と同じ流れで開発が進みます
●1943年1月、「88mm対戦車砲 PaK43/41」を車載化した「88mm対戦車砲 PaK43/1」を主砲とした重対戦車自走砲「ナースホルン」の試作車が完成、1943年2月から生産が開始されました
●この重対戦車自走砲「ナースホルン」は、あくまでも敵の有効射程外で行動する車両として、装甲は10mm程度という弱装甲でしたが、主砲の装甲貫通能力は絶大で、その能力は弱装甲を補うのに充分なものでした
●特に視界が広がる場所が多い東部戦線における「ナースホルン」は極めて有効な兵器として認められ、長砲身砲による低伸弾道性と世界トップクラスの光学技術で作られた照準器による遠距離射撃は、敵戦車の有効射程外から正確無比な威力を示し、対峙したソ連軍将兵にとって恐怖の存在となりました
・ ソ連軍の戦車の有効射程は、砲と照準器の性能により最大で2000m程度でしたが、「ナースホルン」の有効射程は4000m程度に及び、主砲はその遠距離でもソ連軍戦車の正面装甲を貫く能力を持っていたことから、時にはワンサイド的な戦いが展開されています
●もっとも、戦場においては「ナースホルン」が理想とした地形になるとは限らず、更に敵の攻撃は戦車だけではなく、砲兵射撃や航空機攻撃なども発生し、そのような場合、弱装甲の「ナースホルン」は生存性が低いのも事実でした
●このため、重装甲を持ち、主砲も同じ威力を擁する「キングタイガー」や「ヤークトパンター」などの生産が軌道に乗ると「ナースホルン」の生産は縮小化されるようになります
●しかし、「ナースホルン」はその高いポテンシャルから対戦車自走砲として極めて有効な兵器であり、生産は大戦末期の1945年3月まで続けられ、各戦線に配備された「ナースホルン」を装備する重戦車駆逐大隊は戦争終結まで奮戦を繰り広げ、その主砲の威力を連合軍に誇示したのでした
【 「ナースホルンとホルニッセ」について 】
●「ナースホルン (サイ)」は、当初「ホルニッセ (スズメバチ)」と命名されていましたが、「ヒトラー」が最前線で使用される戦闘車両に昆虫の名前は相応しくないとして「ナースホルン」へと名称が変更されました
●「ヒトラー」の名称変更は、「ナースホルン」の生産が始まる前に発生したことですが、実際の正式な名称変更は1944年2月に行われており、このことから従来の資料上の解釈では「ホルニッセ」~「ナースホルン」という名称の流れとなるというのが一般的となりました
●ただし、「フェルディナント」~「エレファント」では名称が変わるだけではなく、その仕様が変更されているのに対して、「ホルニッセ」~「ナースホルン」は仕様は変更されておらず、名称だけの違いとなります
●また、「ナースホルン」はドイツ軍の戦闘車両としては生産途中での仕様変更が少なく、さらには旧部品を使用している場合も多いことから、外観上で「ホルニッセ」と「ナースホルン」とを区別することは困難です
・ 生産時期の関係から「ホルニッセ」の特徴とされる車両(1943年2月~1943年4月の生産車)は、「ナースホルン」全体では少数を占めているに過ぎません
●これらの要因から「ホルニッセ」と「ナースホルン」とを区別することは難しく、現在の資料では「ナースホルン」として名称が統一化されているようです
●ちなみに、本キットが再現している「ナースホルン」は、1943年8月以降の生産車を再現しており、「ナースホルン」では1番多く生産された仕様となります
・ 「アバディーン」に現存している「ナースホルン」は無線機を増設した「指揮車型」であり、通常の無線機は車体前部の車内に装備されています
【 「ドイツ 重対戦車自走砲 ナースホルン」 プラモデルの内容 】
●このドイツ軍の「重対戦車自走砲 ナースホルン」を再現したプラスチックモデル組立キットです
●「重対戦車自走砲 ナースホルン」を詳細かつタミヤタッチによりシャープに再現、アバディーン及びクビンカに存在する実車取材と資料とに基づき、各部の仕様、装甲板のボルトや溶接跡、戦闘室内部の装備品類の配置、主砲の砲架や揺架部分のディテール、そして「3/4号戦車車台」をベースとした車両としての構造などを、タミヤならではの造形力と模型としての追求力により表情豊かに表現した内容となっています
●「ナースホルン」は、大型の車体でオープントップ式の車両であることから全体の情報量が多く、キットもタミヤ社製としてはかなりのボリューム(パーツ数)を持ち、オープントップ式の戦闘車両としてのメカニズムとディテールとが詰まった姿を楽しむことができます
●戦闘室部分の各装甲板や砲架部分の各ステーは薄く成型されており、戦闘車両ながらも華奢な印象を受ける「ナースホルン」としての構造を再現、装甲板部分は目立たないダボ、そして砲架部分を中心とする細かな構造ではパーツ分割の妙により、その構造を表現しながらタミヤらしく作り易さと強度が考慮されています
●「ナースホルン」を演出する自走砲兵のフィギュアが4体付属、冬季における戦闘中のシーンが躍動感豊かに表現されており、緊迫感溢れる「ナースホルン」の勇姿を感じ取ることができるでしょう
●タミヤ社製のキットは、他のメーカーと比べてパーティングラインが抑えられていますが、本キットではより一層パーティングラインが抑えられ、その整形は最小限の作業量で済むようになっています
●足周りを含めてタミヤの「4号戦車」シリーズなどの流用パーツはなく、完全新金型のキットとなります
・ 履帯も「ナースホルン」の車体の長さに合わせた新金型版です
●2014年完全新金型キットとしてタミヤ渾身の一作と評価することができ、MMシリーズの進化の姿、そして「4号戦車」系列における最大の車両としての繊細かつ迫力に溢れた姿を味わうことができる内容となっています
●「ナースホルン」は、「砲身部」「砲架」「車体」の3ブロックで構成されています
【 砲身部 】
●砲身部は、「88mm対戦車砲 PaK43/1」の特徴である砲尾及びマズルブレーキ部のエッジが立った形状を再現、砲身本体は一体成型となっています
●「88mm対戦車砲 PaK43/1」の砲身は一体成型のパーツで再現、マズルブレーキ部は別ブロック化して再現しています
・ マズルブレーキは左右分割のパーツで構成され、内部構造の仕切り部分は別パーツ化されています
・ 砲身中央部に装着されているトレベリングロック用の固定具は上下分割式です
・ 砲尾は3パーツで構成され、閉鎖器は開閉状態を選択することができます
・ 砲身は前後方向に可動式とすることができます
・ 揺架は左右分割式で、後部の内側にはリベットが彫刻されています
・ 揺架は上下方向に可動式とすることが可能です
【 砲 架 】
●砲架は、複雑な構造をパーツ数を抑えて再現、防盾の支持架などの繊細なパーツは、タミヤならではのパーツ分割の妙によりその強度が確保されています
●砲架は左右分割のパーツで構成、これに操作ハンドル、照準器、照準手席、平衡器などを取り付ける構成となります
・ 砲架上部のU字型の構造物は下部の防盾の一部と合わせた左右に分割されたパーツとなっています
・ 照準器は基部も含めて4パーツで構成され、対物レンズ部分は開口処理されています
・ 平衡器は左右分割のパーツ、下部は金属シャフトを使用したシリンダー方式で、平衡器に内蔵させるポリキャップにより砲身の動きに合わせて可動します
・ 砲架の揺架装着部は、上部のカバーが別パーツとなっており、これを揺架の支柱部分を挟み込んで接着することにより砲身を上下可動式とすることができます
・ 砲架は左右への旋回を可動させることが可能です
●防盾は一体成型のパーツで構成されています
【 車 体 】
●車体は、戦闘室が後部に配置された「ナースホルン」の車体レイアウトを再現、戦闘室の各パネルは実車の思わせるように薄く成型され、そのエッジ部分には繊細なタッチで溶接跡が表現されています
●車体は、車体下部パーツをベースとして、足周り、フェンダー、上部パネル、戦闘室の各パネルなどを取り付ける構成となっています
●車体下部は後部パネルを除いてバスタブ式に一体成型されています
・ サスペンションユニットはそれぞれ一体成型のパーツで再現
・ 起動輪、誘導輪、上部転輪は前後に分割されたパーツで、特徴ある形状を再現しています
・ 下部転輪も前後に分割したパーツで再現され、ハブキャップは別パーツにて再現しています
・ 起動輪、誘導輪、下部転輪はポリキャップにより回転可動します
・ 車体後部の牽引装置は上下分割式です
・ ダンパーは車体下部に一体成型され、ダンパー下部の円柱状部分は別パーツです
●フェンダーは、戦闘室部分のスポンソン部分も含めて左右各1パーツで再現
・ ボッシュライトは前後分割式で、カバー部のボルトも彫刻にて再現されています
・ ジャッキは5パーツで構成され、上部方向のツメも再現していmさう
・ ジャッキ台は固定具が一体成型されています
●上部パネルは一体成型となっており、操縦席前面パネルは別パーツです
・ 前部の2つのハッチは別パーツで、開閉状態を選択できます
・ 操縦手用の視察ハッチは別パーツで、開閉状態が選択可能、内部のステーなどがパーツ化されています
・ 車体前部の各フックがパーツ化、接着強度が考慮されたパーツ構成となります
・ 牽引ワイヤーはアイの部分がプラパーツ、ワイヤー本体は付属の紐を使用します
●トラベリングロックは、上部と基部の部分が前後分割式となります
・ トラベリングロックは起倒状態が選択できます
・ 起倒用のワイヤーは付属のニクロム線で再現します
【 戦闘室 】
●戦闘室は各パネルを貼り合わせる方式です
・ 各パネルはダボなどにより確実に形となるように工夫されています
・ 側面のルーバー部分は別パーツ化して再現されています
・ 戦闘室上部のU字状フックは個別にパーツ化
・ 防水布用の小フックはモールドにて再現
・ 戦闘室内側には無線用のターミナルと配線がモールドされています
・ 後部のドアは別パーツで開閉状態が選択できます
●戦闘室内部に装備される下記の装備品類がパーツ化されています
・ 予備アンテナ
・ MG34 機関銃及びラック
・ 機関銃弾薬箱及びラック
・ ペリスコープ (×2)
・ ペリスコープ固定具
・ MP40 サブマシンガン及びラック
・ 各種工具箱
・ 砲隊鏡
・ 砲隊鏡ステー (可動式)
・ ガスマスクケース (×2)
など
●左右の砲弾ラックは各パネルを貼り合わせる箱組み方式です
・ 前面扉は1パーツで再現され、開状態とする場合はカット加工します
・ 砲弾を収めるトレー部分がパーツ化
【 履 帯 】
●履帯は、塗装及び接着が可能な軟質素材によるベルト式履帯が付属しています
・ 履帯は、接地部分に滑り止めパターンがない「3/4号戦車」用の「中期型」履帯が表現されており、モデルカステン製「3/4号戦車 中期型用履帯 タイプA (可動式)」がこれに対応しています
【 アクセサリーパーツ 】
●砲弾ラック及びフィギュア用などのアクセサリーパーツが付属しています
・ 徹甲弾 ×8
・ 榴弾 ×8
・ 空薬莢 ×8
【 フィギュア 】
●戦闘中のシーンを再現した自走砲兵のフィギュアが4体付属しています
・ フィギュアの内訳は、車長(将校)1体、照準手1体、装填手2体です
・ 服装は、冬季用の「防寒アノラック」を着用、ヘルメットを被った姿です
・ 服の皺の表現はスケールに沿いながらも、実際の服の皺とその生地による素材感とが演出されており、服の縫い目やポケットなどの細部は微細なモールドで彫刻されています(従来のタミヤ社製フィギュアよりも皺のパターンは細かく、そして彫刻自体は深くなっています)
・ フィギュアは、頭部、胴体、両腕、両足のパーツ構成です
●各フィギュアのポージングについて
・ 車長のフィギュアは、双眼鏡を両手で持って覗いているポーズ
・ 照準手のフィギュアは、照準手席に座り、片手でバイザー、もう一方の手で照準器を操作し、照準器を覗いているポーズです
・ 装填手のフィギュアの1体は、片膝を付いて砲弾を両手で持っているポーズ
・ 装填手のフィギュアの1体は、立った姿勢で砲弾を持ち上げ、砲に装填しようとしているポーズとなっています
●フィギュア用の装備品として
・ 双眼鏡 ×1
・ 拳銃ホルスター ×1
・ ヘルメット ×4
が付属しています
【 塗装とマーキング 】
●実車の解説と塗装例が記載されているカラーのリーフレットが付属
●「ナースホルン」のマーキングとして、ドイツ軍仕様となる3種類の塗装例がリーフレットに記載されています
・ ドイツ国防軍 第519重戦車駆逐大隊 (ベラルーシ / 1944年2月)
・ ドイツ国防軍 第88重戦車駆逐大隊 (ウクライナ / 1944年)
・ ドイツ国防軍 第525重戦車駆逐大隊 223号車 (イタリア / 1944年)
●カラーリーフレットの塗装例に基づく、国籍マーク、部隊エンブレム、車体番号、戦術マーク、パーソナルネームなどを再現したデカールが付属しています
●2014年 完全新金型
-------------------------------------------
【 「ドイツ 重対戦車自走砲 ナースホルン」の組み立て上の注意 】
●砲架に装着される平衡器は、金属製シャフトと内蔵させるポリキャップにより砲身に動きに合わせて可動する方式ですが、ポリキャップの圧力と比べて平衡器のアーム部分の強度が不足気味です
●そのため、砲身を固定式とするか、グリスなどによりポリキャップの圧力を下げておいた方が良いでしょう
【 「ドイツ 重対戦車自走砲 ナースホルン」の履帯について 】
●「ナースホルン」に装着された履帯は、基本的に「4号戦車」の各履帯の装着時期に準じたものとなっていますが若干の差異が生じていますので、解説しておきます
・ 「ナースホルン」に装着された履帯は、主に「3/4号戦車」用の40cm幅履帯の「中期型」と「後期型」となります
・ 「ナースホルン」は、1945年3月まで生産されましたので、時期的には接地部分にハの字の滑り止めパターンが付いた「後期型」(モデルカステン製「3/4号戦車 後期型用履帯 (タイプA) (可動式)」)が多くなるはずなのですが、実車写真では装着車両は意外と少ないです(もちろん存在しています)
・ 「ナースホルン」で多くを占めている(写真上では)のがセンターガイドに肉抜き穴がある「中期型」履帯(モデルカステン製「3/4号戦車 中期型用履帯 タイプA (可動式)」)となります
・ ただ、バリエーションとなる接地部分上下に凹みがある「中期型」履帯(モデルカステン製「3/4号戦車 中期型用履帯 タイプB (可動式)」)も装着例が多く、車体前部の予備履帯ラックにこの「中期型」履帯2種を付けている車両も見られます(上下に凹みがある「中期型」履帯はセンターガイドの肉抜き穴がない)